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オンライン版に期待します
 
国士舘大学政経学部教授 阿部武司

 雄松堂書店が、明治初期から終戦後の1950年までをカバーする約9千社16万点の営業報告書、それらを引き継ぎ1961年以降85年までに公刊された約4万点に及ぶ主要各社の有価証券報告書、戦後の1948−90年に世に出た目論見書、以上3系列を横断的に検索できる企業史料統合データベースを、オンライン版で発売するとの朗報に接した。
 雄松堂から刊行されたマイクロフィルム版『営業報告書集成』のお世話を受けた研究者は少なくないだろう。同社が1966年以降に順次、それまで閲覧が容易ではなかった各社営業報告書を出版してくれたおかげで、近代日本に関する経営史、産業史、経済史等の研究水準は飛躍的に高まった。この資料集から得られるデータを丹念に分析することによって私たちは、企業の活動の軌跡をつぶさに把握できるようになった。日本企業の歴史を語る多数の書物が出版されている今日、それらの学術的価値を見極める一つの手段は、営業報告書類を活用しているか否かを確認することだと言っても過言ではあるまい。
 ただし、必要な資料を探し出すまでの作業が容易ではないのがマイクロフィルムの難点である。このデータベースによってそうした検索作業がきわめて簡単になるだけでなく、その企業の有価証券報告書や目論見書まで直ちに求められるようになる。多忙な現代に生きている研究者には、まことにありがたいことである。なお、戦中・戦後のような激動期には企業の統廃合や名称変更がしばしば生じ、その把握が困難なことも多いが、このデータベースはそうした問題の解決にも有益であろう。また、こうした統合データベースは、出版されたのちにもデータを補完し、さらに新しい系列の史料を加えて、コンテンツを増やしていくことも難しくないと思われる。雄松堂書店が今後そうした改訂を重ねていくことも期待している。このデータベースによって日本企業に関する歴史的実証的研究がおおいに進むことを願っている。



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 『営業報告書集成』のさらなる進化を喜ぶ
立教大学経済学部教授 老川慶喜

 営業報告書は、会社の企業活動全般を的確に把握できるので、経済史・経営史研究において、もっとも基本的な史料のひとつとして広く利用されている。しかし、かつては入手すること自体が困難で、古書店の目録でみつけるか、資料調査のなかでたまたま発見するかしかなかった。鉄道業のような許認可事業の場合は、都道府県や国の行政文書のなかに紛れ込んでいることが多かったが、それでも設立から解散にいたるまでの営業報告書をそろえるのは至難の技で、長年月を費やして少しずつ集めていかざるをえなかった。
 雄松堂からマイクロフィルム版『営業報告書集成』が刊行されると、営業報告書へのアクセスは俄然容易になった。その結果、多くの研究者が営業報告書を利用するようになり、今や当然のごとく営業報告書が利用されている。その意味では、MF版『営業報告書集成』は日本の経済史・経営史研究の水準を大きく引き上げたといえる。
 ただ、MF版には、営業報告書を読み込んだり、複写をしたりするのに手間ひまがかかるという大きな難点があった。私の研究室には、MF版『営業報告書』から複写したコピーがいくつもの段ボールにつまっているが、プリントアウトしたときの手間暇を考えるとなかなか処分できず、研究室の空間を埋め尽くしている。その営業報告書が、オンライン版『企業史料統合データベース—Business Archives Online—』によって、研究室で手軽に読むことができるようになるとのことである。しかも、収録会社数がMF版よりも増え、欠号もかなり補充されている。オンライン化されると、数社の営業報告書を比較しながら読むなど、利用の仕方にもさまざまな工夫が可能となり、研究のスピードはもとより、質的な向上も期待できる。営業報告書は、学生が卒業論文などで利用することも多くオンライン化は学生の研究指導、あるいは若手研究者の養成という観点からも朗報といえよう。