Vol.99 2015年、世界の出版界・古書業界の動向

2015年、世界の大手学術書出版界

今年の業界関連の新年会では、主催者やゲストが公式の立場で、売上減、収益減をはっきりと表明し危機感を訴えていました。当社の事業とも関連の深い出版界と図書館との関係についても発言がありました。実際のところ、電子媒体の出現は出版界が流通過程で得ていた利益を電子媒体部門の産業に転換していく傾向を強めており、注目が集まっています。海外のネットコンテンツが10月から消費税の対象となることが決まりましたが、こうした外資系版元の動向により、彼らの日本戦略も大きく変化する兆しが見えています。
当社の主要な市場である大学・研究機関の資料購入予算、とりわけ人文社会系資料への予算は、経済発展への即効性に乏しいとして、アベノミクスの中で減額傾向にあります。その中で当社が増益を目指すならば、社内の改革、新しい事業への転換に向けて総力を挙げて取り組まなければなりません。海外版元は、縮小する日本市場に向けて大幅に値上げする姿勢を強めていますが、それでも顧客が必要とする商品を開発しようとしています。 2015年は、従来どおりの事業を継続するだけでなく、顧客のみなさまが「今本当に望んでいること」に誠実に向き合い、自社製品の開発への投資を念頭に入れ特化した事業を形成することや、国内外の提携企業と協業できる体質へ転化することといった改革に取り組んでまいります。
 

海外古書業界の動向とABAJ古書展

昨年後半からの急速な円安(米ドルのひとり勝ち)やヨーロッパ、中東の政治不安は、古書市場にも大きな影響を与えています。古書の中でも投機的な要素のある超骨董品タイプのものは、このところ一気に価格が上昇して市場を驚かせています。その一方で、研究資料の購入者や一般的な古書愛好家の購買力は急速に下降しているので、海外の各書店は割引の姿勢を見せています。日本の収書家や当社のような日本の古書専門店にとって、この割引価格は買いどきと言えるかもしれませんが、こうも円が安いと躊躇せざるを得ません。 今年はちょうどABAJ(Antiquarian Booksellers Association of Japan)の創立50周年にあたり、記念の古書展が3月5~7日に東京のグランドパレスで開催されます。当社を含むABAJ会員書店は、現在展示会に向けて準備しているところです。今回は特に、欧米の古書市場は前述のとおり不況感が強いせいもあり、海外から20店以上の書店が参加を予定しています。古書愛好家のみなさまにとっては、良い本が比較的手ごろな価格で手に入るチャンスかもしれません。ぜひご来場いただき、世界で今、どんな古書が人気なのかをご自身の目で確かめていただきたいと思っています。
 

“オーデュボン『アメリカの鳥』” マスコミに大きく取り上げられる

それぞれの分野で伝統と匠の精神を持ち続けてきた企業集団である、印刷の大日本印刷、紙の竹尾、製本の大入と当社が総力を挙げて制作し、世界の市場に発表した、ファクシミリ版 オーデュボン『アメリカの鳥』は、昨年末マスコミに大きく取り上げられ、話題となりました。もちろん日本をはじめアジア(特に出版に協力してくれたタイの大手書店)、母国であるアメリカ市場からも予想以上の反響、協力のコンタクトをいただきました。世界でも著名な名著の復刻刊行事業を日本の雄松堂書店が手掛けたことを誇りに感じています。創業80周年のモットーであった“雄松堂からYUSHODOへ”を具体化したひとつの事項として位置付けています。
 
そのほかにも復刻版、マイクロフォーム版、デジタル版など当社でなければ担い手がいないであろうと自負する開発事業について、昨年から一気に企画化し投資を開始しました。厳しい時代に生き残る策として、これからますます加速させますので、当社の開発事業に今後もご期待いただければ幸いです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

The Japan News by The Yomiuri Shimbun 2014年12月26日掲載

The Japan News by The Yomiuri Shimbun 2014年12月26日掲載

最後になりますが、当社の関連会社が企画・運営・経営の主体となっている毎年11月に開催する図書館総合展や、少しずつですが洋古書コレクターを増やしている当社のWABP(ワールド・アンティーク・ブック・プラザ 丸善 日本橋店3階)、台北を拠点として資料の復刻企画を進めているYutrans Interactive Co., Ltd.など、2015年もユニークに、元気に事業を展開してまいりますので、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 
2015年2月