Vol.74 混沌からの脱却―第12回図書館総合展から―

2010年の図書館総合展(同時開催 学術情報オープンサミット)は11月24日~26日、直前に開かれたAPECの関係で例年より約二週間遅れての開催となりました。APECのお陰でパシフィコ横浜は知名度が上がり、今回入場者数は2万3千名を超え、盛況を極めることとなりました。
この展示会は12年前、「本の保管業」として私が発案し、出版の講談社、倉庫のヤマタネ、配送のヤマト他、出版印刷業者計20社の協同ベンチャー企業としてスタートし、現在では千以上の個人や団体から300万冊近くの本をお預かりしている(株)カルチャー・ジャパン(JCC)が運営母体となり、「図書館関係の人々が1年に1度、一同に集って話し合い、新しい図書館のあり方を考える」ことを目指して、独立した図書館運営委員会を発足させて現在に至っています。
 
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今年は3日間の会期中、50近いセミナーやフォーラムが開かれました。参加各企業や団体がこの図書館総合展を「企画や製品の発表の場」として利用し、年々内容は充実して参加者も7千名を越えました。アメリカのALA(全米図書館協会)大会に匹敵するイベントとなっています。
数年前から、その時最も重要な図書館の未来像に関するセッションを運営委員会自身が企画してきましたが、この企画は一段と公共性を高め「図書界、出版界、IT業界」を交えたトップクラスの討論の場となり、また問題点を提起する場所として高い評価を得ています。
 

公開セミナー 東京大学史料編纂所「社会連携研究部門: 図書館等所蔵史料の調査・整備研究」の目的

公開セミナー
東京大学史料編纂所「社会連携研究部門:
図書館等所蔵史料の調査・整備研究」の目的

公開セミナー 大学図書館における 人社系データベースの整備について

公開セミナー
大学図書館における
人社系データベースの整備について


 
「ネットワーク社会における図書館の将来」というセッションには文科省、経済産業省、総務省、国立国会図書館からそれぞれの担当者が参加しました。縦割り行政から、今一気に横一列でグローバル社会、デジタル時代に向けて官民挙げて対応する型はできてきましたが、スピードを必要とする社会の要請にはどう応えていくのでしょうか。また、当日は長尾眞国立国会図書館長がほぼ一日フォーラム会場におられ、いわゆる「長尾構想」に対し各方面と活発に討論が交わされました。
片山総務大臣が議会中の多忙なところ「地域主権と図書館」のテーマのセッションに参加され、嘉田滋賀県知事や古川佐賀県知事、北川早大教授とともに「日本の未来に占める図書館」について討論されました。今やトップレベルを巻き込む段階に入っているといえます。
その他にも東京23区の図書館の在り方、一方で著作権に絡むデジタル時代「電子書籍元年」の問題点・・・日本ではいまも各方面の方々がその人の立場で意見を発表しています。「図書館総合展」の責任者として私は「グーグル時代におけるエンドユーザーにとってどういうメリットを与えることができるか?」を追求したいと思っています。来年は更なるグローバル時代の中で、出版界と洋書、出版と流通を通して図書館のあり方を追求していく予定です。

 

雄松堂とDNPの共同作業の進化

雄松堂は既に二年近くグローバル化、デジタル化の中でこの分野の業界大手DNP(大日本印刷)と共同でいくつかの事業計画を進めてきました。「本のある時間」timewithbooks.comは高宮編集長の下でDNPの協力を得て、数多くある「本の読者サイト」の中でもユニークで特徴あるものに育ちつつあります。今後海外のユーザーにも対応できるハイレベル化、広告等を加えて更なる充実と促進を計りたいと思っています。
 

本のある時間 トップページ

本のある時間 トップページ


 
また、日本の歴史資料を大きなプラットフォームに入れて、誰でもアクセスできるような拡大型オンライン構想‘Japan Archives’は来秋発表を目指して本格的な作業が進行しています。
雄松堂はDNPとの資本提携の集大成として、来春にはCHIグループの一員として、特に海外戦略や情報開発等を通じ、グループの仲間である丸善と特に洋書輸入分野の一体化をめざして、新しい第一歩を踏み出す段階に至り、楽しさと緊張感を念頭に入れて2011年を迎えたいと思っています。
 

11月イベントのお礼

11月本社ビルにおいてドナルド・キーン先生の特別講演「谷崎潤一郎と私」を皮切りに、雄松堂の国際古書展と広島経済大の石田学長や上智大学の高祖理事長を講師に迎えて、フォーラムを開催させていただきました。数多くの方々が御参加くださったこと、また、専門店としての責任を社員一同で自覚する機会を得たことに感謝しています。来年は更に充実した企画を提案していきたいと思います。
 

グロリアクラブ特別例会 ドナルド・キーン氏 「谷崎潤一郎と私」

グロリアクラブ特別例会
ドナルド・キーン氏
「谷崎潤一郎と私」

FORUM Part 1 雪嶋宏一氏 新版『知の系譜』を刊行して

FORUM Part 1
雪嶋宏一氏
新版『知の系譜』を刊行して

FORUM Part 2 キリシタン版から見えてくる17世紀初頭の宣教活動 ─ 『サカラメンタ提要』「付録」をめぐって─

FORUM Part 2
キリシタン版から見えてくる17世紀初頭の宣教活動
─ 『サカラメンタ提要』「付録」をめぐって─

FORUM Part 3 平成の経師と和装本・洋装本の修復(株)大入 和綴本体験実習の様子

FORUM Part 3
平成の経師と和装本・洋装本の修復(株)大入
和綴本体験実習の様子


 
2010年12月