Vol.73 ‘今世界の古書市場は’ 国際古書籍商連盟ボローニア大会での討議と印象

2年に1回ILAB(国際古書籍商連盟)は発足以来60年以上、世界大会と記念の稀覯書展を開催しています。第39回は久し振りに“本のメッカ”であるイタリア、しかもイタリアが統一した後、一時的に国家の中心として政治文化の中枢を担って栄えた北部の要所であるボローニアで開かれました。
ILABに加盟している22カ国中14カ国が参加し、古書展も140ブースが設営され、総参加者は250名に達して久し振りの盛況を極めました。
この第39回総会の中で話題になったいくつかの事項を紹介します。

  • 新しくハンガリーにおいて13名の業者によって協会が発足し、ILABに正式加盟した。東欧地区で初めての参加であり、近くポーランドの参加も予定されている。
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  • 昨年、中国とロシアが正式に加盟したが、ロシアが予定していた10名以上の会員が集まらず、一時休会状態で今回も代表の参加はなかった。
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  • 中国は前回5名のオブザーバーを派遣して正式加盟が承認され、2011年秋には会長会議(総会のない奇数年に開かれる同じ効力を持つ会合)を招致しするということで、期待された中国政府が所謂‘TAIWAN ISSUE’、“台湾は中国の一部であること”をILABが正式に文書で認証してほしいと要請をしてきた。しかし、「ILABは一切の政治・宗教には関与しない」というILABルールに従いって正式に拒否したことにより、中国協会は一時休会して当面中国当局の様子の変化をみることになった。今回参加していた5名の代表団は一切の会合に参加せず、古書展を見学して帰国したが、中国市場の将来を期待して昨年温かく迎え入れたILABとしては非常に難しい決断だった。(来年友好促進のために、数名の仲間と改めて北京を訪れることにしています。)
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  • 『ネットビジネス』による売上がILABでの販売で平均20%に達したと報告された。店を持たない業者や1人2人で経営する業者など、新規参入者には大きなメリットをもたらしているが、店舗経営者や主として輸入型(業者から購入、日本もそのタイプ)の業者にとっては必ずしも有利に動いておらず、ロンドンなど店舗型の業者の売上は大きく下降していることから『ネットビジネス』に関してはかなり討議が集中した。
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  • 新しい顧客をつくることについて様々な意見があった。例えば高価品を扱うオークションなどだけではなく、書籍という商品が資産として価値のあることのできる体制づくりを考えるなどがあげられる。
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  • 4年に1度のILAB書誌学賞は第15回を迎え、今回オランダの出版社が出版した大英図書館の目録とオランダ児童書目録が受賞し各1万ドルを贈られた。(これにより同プロジェクトの運営委員長としての私の役割も終わりました。)
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  • ILABは新会長にオランダのゲリッツ氏を選出した。
    一方古書展は「世界子供の本展」等で有名なボローニアという“本のメッカ”で開かれたこともあり、超満員となった参加者と70%イタリアの書店がしめた数多くの出展者によって盛悦をきわめ、改めて古書史の中でイタリアの果たした役割の大きさに感心しました。大きく価格を割り引いても現金化を急いでいる著名書店の出展や、顧客からの依頼で市場初登場のような古書等が多く展示され、アジアの古書業先進国として日本はこれからどうあるべきか考えさせられることの多かった大変価値のある展示会でした。

全ての行事を統括したイタリア協会の会長プレグリアスコは1972年に日本で大会を開いた時に12歳で父親と一緒に来日し、今回の大会もその時の印象を強く意識して、著名な図書館の視察等をスケジュールに加え、久し振りの充実した会となりました。次回の大会は2012年スイスのチューリッヒで開催されます。
尚、余談ですがイタリアおよび、EU諸国では市内は別として1歩外に出ると殆ど信号はなく、交差点はロータリー化しており、聞くところによると遅延渋滞は20%減少し、エネルギーも10%減っていると聞いて驚きました。
 
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国際古書籍商連盟ボローニア大会にて

国際古書籍商連盟ボローニア大会にて


 
2010年10月