Vol.65 国会図書館のチャレンジと出版界

5月末、政府が経済危機対策の緊急対応として、総額13兆余にのぼる超高額な補正予算を国会で成立させたので、総選挙をにらんで各方面で議論が高まり、一方では具体的な需要が市場にどのような形で流れるのか注目されています。
この予算の中に国立国会図書館の長年にわたる懸案であった保管文献をデジタル化するための予算が120億円計上され、出版権、著作権をめぐって話題を投げかけています。
 
先月韓国で、ソウル国際ブックフェアがソウル国際展示場で開催され、ちょうど今年が同展の“日本年”であったことを記念して、いくつかのシンポジウムが催されました。その中で、国立国会図書館館長、長尾真氏はパネリストの1人として、去る5月16日「デジタル時代の図書館と出版界の協調」というテーマで約20分にわたり持論を発表されました。(当日長尾氏はおりしも新型インフルエンザ流行による、政府から渡航抑制の呼びかけのため、欠席せざるを得なくなり、司会進行を担当していた私が同時通訳付きで代読しました)
 
出版界は以前から納本と同時にデジタル原稿を国会図書館に納め、同館は検索機能体制を整えてきました。出版界側からみると保管を依頼したことになりますが、デジタル画像を永久保管し、関西館、こども図書館を含む来館者に、著作権法上の認められる範囲内でデジタル画像を自由に閲覧可能にするシステムには基本的に合意していました。今回の超大型補正予算によって少なくとも50万冊、1億ページの同館所蔵文献のデジタル化が一気に促進されることになり、同館だけでなく対応する業界も含めて準備が進めてられていますが、言うまでもなくデジタル化の予算は国の税金であり、デジタル化された文献が同図書館内だけで閲覧されるというはどうかという大きな問題を抱えています。
 
長尾館長は、出版界が管理する出版権や著作権対応を含めて、地域や文化の公平性や地域格差をなくすために、いくつかの提案をすでに発表しています。最終的にはユーザー(図書館利用者)のためにどうあるべきなのか、今後議論が進むものと想定されますが、今秋には一つの結論が出るであろうと思われます。
 
出版界はこの他にも、最近紙上を賑わせているIT化の渦中で、グーグルの問題や、出版流通システムに関係した大手異業種からの出資、企業合併、業務提携等、様々な要因によって、まさに明治時代の初めから日本の文化を担ってきた出版界の伝統的な流れが一気に転換し加速する段階にさしかかっています。
 
しかし、私達は常に本の持つ活字文化の原動力としての価値観を大切にしながら、常にユーザーの支持を得られるように心がけていくことが大切であると確信しています。
 

ソウル国際ブックフェア“日本年”の入口

ソウル国際ブックフェア“日本年”の入口

「デジタル時代の図書館と出版界の協調」

「デジタル時代の図書館と出版界の協調」


 
2009年6月