Vol.64 中国古書籍商協会(ABAPRC)の動きと 洋古書の中国市場について

去る3月14日から18日、中国古書籍商協会(ABAPRC)の招待で、ILAB(国際古書籍商連盟)事務局長であるオーストラリアのフェアイン氏と北京を訪ねました。この協会がILABの21ヶ国目の加盟国として、入会の強い意思表示があることを確認することが今回の訪中の主な理由でした。
 
私は、過去3回ほど北京を訪ねた経験がありますが、道路やビルの整備、自動車の数の多さ、新空港の立派なこと、高級レストランのレベルの高さには中国の富裕層らがハイファッションで詰め掛けていること等、確かに表面的にはオリンピックを経て急速に経済成長しており「すごい」と感じました。しかし一方で「法整備」や「国際的商習慣」等、具体的なことについては問題が多く、私達のビジネスや現地との共同事業等を進めていくためには、調整を要することが多くあると感じましたし、中国の人達も現状のままでは問題が多いと自覚しているようにも思えました。WebやNet等はすでに高度に進んでいるので、具体的なケースとのギャップをどう処理していくのか、私達もできるだけ協力をしたいと思います。
中国では外国資本による出版社の設立は許可されていないので、私達が出版事業をする場合は現地資本の会社のブランドを借りなければなりません。また、古書(中国では私達の考えているものを“古籍善本”と呼んでいるようです)については、1911年、孫文が新中国をスタートさせた時点から、以前のものは輸出禁止となり、新しい本でもまとめて輸出入をする時は政府公認の輸出入公司を通す必要があります(数冊のケースは手荷物や小包で輸出入していると聞きます)。私達が香港で実施している古書展をいずれは“北京”か“上海”でも開催したいと考えていますが、現実問題としては事務手続き等に時間や費用がかかり過ぎて、現状では難しいのではないかと思っています。
中国古書籍商協会(ABAPRC)は全国にあるたくさんの古書店(許可をもらって個人事業をしている店が多いようです)の中で、今後海外とも取引をしていくという方針がはっきりしている、全国の主要都市にある12店が北京の中国書店を中心として、政府機関の承認のもとで結成した協会で、ILABの入会を求めています。
 
フェアイン氏は北京からちょうどスペインのバルセロナで開かれるILABの理事会に参加するので、協議が順調に進めば、私達の北京での打合せや質疑応答の結果をまとめて、10月ウィーンで開かれるILAB総会に提出することになっています。現地の中国の人達は立派に組織を作り、中心となる中国書店は北京だけでも新刊、出版、企画、古書等を手掛ける大手で、この分野の中国における中心的存在です。この書店がシステム作りをしっかりやっているので、おそらくスムーズに入会できるものと思われます。入会すれば、世界中にあるILABの加盟団体主催古書展に参加できる他、多数の具体的なメリットがあるはずです。問題なのは具体的な取引の不便さ等を克服し、円滑に運営されるためにはまだまだ10年位はかかると思われることです。しかし、中国の西洋貴重書の市場が戦争後のアメリカ、1970年代の日本のように成長するであろうと期待していますので、正式にスタートを切ることができる体制が整ったことは喜ばしいく思います。
 
皆さんの中にも中国を訪問した方も多いでしょうし、国立図書館(国家図書館)や北京大学図書館を訪れた方は、そのスケールの大きさと立派さに驚かれたと思います。
ここ数年、中国は長い歴史を持つ世界的文化遺産として、評価の高い中国の印刷物や写本資料等を積極的に内外から再収集を進めており、日本にもトップクラスの古典籍が昔中国から渡っていますので、収集のため最近中国の業者の来日も多いようです。
 
清朝の時代にヨーロッパから宣教師が多くの立派な本を中国に持ち込んだことは、その道の専門家なら誰でも知っている話ですが、今回の訪中のもう一つの目的は、それらがどこにいってしまったのか、長い間不明であったものが今どこに保存されているかを確認するため、現地の専門家と会うことでした。たとえば北京市内東西南北の大きな教会(今は完全リニューアルされ市の中心にあり観光スポットになっています)の中に行方不明の本が多数保存されていたことが判明し、特に北堂教会にあった約5,000点のうち4,000点については、国家図書館に1960年くらいから徐々に移管され、現在一生懸命に修復作業が行われていることが確認でました。これらの本については1949年に宣教師が目録を刊行しており、このコレクションの中にあるキリシタン版を始め、貴重なものについてファクシミリ、またデジタル化が可能か交渉を始めようと思っています。西欧古書の専門家である私達の訪問を歓迎していただきましたし、これらの蔵書を保管していくには、ぜひ私達日本が協力することが必要であると思っていますので、日本の政府機関にその可能性について交渉してみたいと思っています。
 

北京、中国国家図書館

北京、中国国家図書館

国家図書館の古籍担当者

国家図書館の古籍担当者

中国国家図書館所蔵キリシタン版

中国国家図書館所蔵キリシタン版


 
2009年4月