Vol.63 2009年、年明けに考えたこと

昨年11月ホテルニューオータニで開かれた“デジタル雑誌国際会議”そしてパシフィコ横浜での“第10回図書館総合展:学術情報オープンサミット”において多角的に取り上げられた数多くのセッションやセミナーに参加し、それぞれの分野の責任ある立場の講師や、国際的に著名な出版社・図書館関係者の話、活発な討論を聞いていると“情報産業”は全く違った次元の世界に突入したことを実感しました。そしてもし私自身が20歳ほど若かったら、一気にその荒波の中に突き進んでいったに違いないと思いながら2009年の新年を迎えました。
 
すでに今から20年ほど前に、当時のアメリカ議会図書館のブースチン館長が年頭メッセージで「グーテンベルグが印刷術を発明して、一気に情報が多くの人々に影響を与えられるようになったこの500年に匹敵するような情報技術の進歩が、ITの出現によってこれから50年ほどで革命的に変化するだろう。しかし科学技術等を除いて、活字による出版は今後もさらに価値を持つであろう。本はどこでも持っていけるし、いざとなればベットの下に隠しておけるから。私達は人間だから・・・。」たった20年ですでに予想以上の変化が到来しました。人類にとっては幸いなことです。
 
12月はじめ、私共雄松堂書店は恒例のYUSHODO FORUMを開催し、日本有数の古典籍を所蔵する天理図書館と早稲田大学図書館の代表の方をお招きして、デジタル時代の現在、図書館がどう対応していくのかという公開ディスカッションを開きました。そこで、改めて良い本を所蔵することの価値、そしてそれをどう保存し、またデジタル公開すべきなのか大きな二つの流れがあることが判りました。古い書物を扱う一方で保存のために、マイクロフィルム化を促進してきた雄松堂としてこれからの在り方を示唆した有意義な会で盛会を極めました。
 
私たちのマーケット、特に専門書などは図書館市場が主力であるので、予算がIT分野に使われる比率が上がればトータルの予算が増えない限り、徐々に縮小する可能性が強いし、一般の本も含めて私たち洋書輸入業者に大半を任せていた海外の版元も、情報化時代に大幅なマークアップをし、販売していた過去の慣習を引き継ぐ業界に任せてはおかないでしょう。やっと日本市場もグローバルスタンダードの中でビジネスを展開する必要に迫られつつあります。単なる商品の売買から、企業の合併、海外との協業、資本の参入等、日本語圏という特異な事情があるにせよ、何れにしても大変革の時代に突入したことは間違いないと思われます。一方非常に保守的で、団結力が無かった日本の出版業も急速に「変化」を遂げていくと予想されるし、海外での製作、日本語以外の出版や翻訳出版等、当然大手の取次も洋書の分野に参入してくるかもしれません。
 
こんな事を言って「貴方はどうするつもりですか?」と聞かれるとすれば「堅実に今まで築いてきたことをしっかりやっていけば何とか生き残っていけるでしょう」と答えると思います。ただし日本の国自身が生き残れればですが・・・。

 
2009年1月