Vol.61 IT時代の古書業界-国際古書籍連盟総会での大討論-

去る9月6日~10日、今回初めてスペインのマドリッドでILAB(国際古書籍商連盟)の総会を開催いたしました。今回は加盟国20ヶ国中16ヶ国が参加して理事会・総会・会員討論会等が開かれましたが、私がこれまでILAB諸会合に参加してきた長い経験の中でも久し振りに長時間にわたる熱心な内容に終始した会合だったと思います。そのくらい現在の古書業界には問題が多く点在していて、未来に対するはっきりとした展望が不鮮明かと思われます。
会合は会長の任期を終えたシュタインバッハ氏(オーストリア)からアドリアン氏(イギリス)への交代、その他役員の選任、会計報告や予算案等通常の案件はスムーズに進行しました。私が委員長をお引き受けすることになった国際書誌学文献コンクールに、イギリスの財団から大口の寄付をいただきました。ILABの主要なイベントとして今後更に充実していくことでしょう。またスペイン協会の設営も上々でありましたし、世界中で予定されている各国の“古書展”および2009年ウィーンで開催する会は、日本でも会員が多い国際ビブリオフィル協会と日程を合わせてコレクターとの交流を計る等、種々な議題についても決定しました。
 
ILABは世界中の約1,800名の会員に対してインターネットを通じてアンケートを実施しました。アンケートの内容を例にあげますと“ILABは必要か?” “ILABはこのままでよいのか?”などでしたが、回答率がわずか5%であったという報告がありました。インターネット利用のアンケートが5%そのものへの討議(会員の何パーセントがILABのネット情報を検索しているのか?英仏公用語圏外の会員は利用しているのか?)から始まりましたが、結論としてこの種のアンケートは回答率が5%というのは一般的に当然であるという私や他何人かの意見が正しいのかもしれません。E-MAILが一般化したのはほんの10年ほど前からですが、インターネットによる販売が書物(特に古書等)に適しているということで一斉にインターネットによる販売方法が加速されて、特に国土の広いアメリカ等はインターネットによる販売は既に売り上げの20%を越していると言われています。ILABが8年前にロッキングストーン社とタイアップしてILAB-Websiteを立ち上げて以来、グーグルをはじめ、大小いくつかのWebビジネスが参入してきました。しかしロッキングストーン社は当初ILABとの契約の際ILAB会員のほとんどが加入すると想定していたのですが、加入数は600名前後で伸び悩んでおり、このままでは採算が合わないということで、今後契約の更新には応じないと突然の申し出がありました。もちろんWebの検索サービスを充実させることは業者にとっても重要な課題なのですが、お客も含めて多くの皆様に情報公開されることにより、業者の利幅が急減しています。そのためヨーロッパの業者はWebについてかなり懐疑的、消極的な傾向にあります。討議の結論として、“Webで顧客が増えましたか?利益は増えましたか?”という問いに対して90%の答はノーでした。しかしながらIT時代の進化は更に加速していくと思われます。その中で供給に限界がある高額商品を扱う私達にとっては、Webがこれからどのように改善されて展開をしていくのか、Webを“パートナー”として仕事をするのはどのようなことなのか、今後ますます議論が続くことでしょう。
 
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マドリッドでILAB総会の様子

マドリッドでILAB総会の様子

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2008年10月