Vol.59 ソウルIPA大会に参加して

IPA(国際出版連合)の第28回総会は、去る5月12日から4日間ソウルのCOEX(国際会議センター)で開催されました。4年に一度開かれる大会ですが、東アジアでの開催は30年近く前に京都で開かれて以来久し振りのことです。韓国は太平洋戦争後、いち早く出版協会を設立しており、現在は出版点数も日本の約1/2に近い出版大国として、またITの先進国として、著しく変化する世界の出版界の現状を総括するためにも大会開催地として最適な国でした。
 
韓国と私達日本の出版協会とは常に強い友好関係にあることから、今回は日本からも代表的な大手出版社をはじめ中堅専門出版社等80余名が参加し、参加総数600名中、約半数を占める韓国出版人に次ぐ参加国となり、28におよぶ分科会にも積極的に参加して活発な討議に加わっていました。ほぼ完璧な同時通訳が私達の参加意識を高めたのかもしれません。日本からも講談社の野間副社長はじめ9名が発表者として具体的な問題提起をしました。
 
前回は4年前にベルリンで開かれましたが、開会のセレモニーで当時のドイツ大統領が“文字を読めない人のために出版界は具体的な努力をしてほしい、しかし読めるのに本を読まない人こそ問題だ。”と読書人口減に危機感を示しましたが、たったこの4年間で出版界をとりまく環境は更に一段と変化したことが明らかとなり各分科会の討議の重要なテーマとなりました。デジタル時代の著作権、紙とデジタルは両立するのか、読書人口を増やす努力は?などです。
オープニングセレモニーでは李大統領本人が登場して15分にわたり“出版文化、文化の高さが経済の高さに繋がる。韓国政府は今後の教育、出版文化、図書館界等に全面的に協力する。”とスピーチし、会場から大きな拍手がありました。今回の大会運営のために高額な資本力が投入されたとも聞いています。日本の政府も口だけで“文化”を唱えるだけでなく、首相自らが先頭に立って協力することができるでしょうか。
 
中国出版協会はIPAに未だ参加していません。WTO加盟以来、常に入会を希望していますが“出版の自由”というIPAの基本理念から具体的な加盟審議に入れないままでいます。しかし、大会には中国から多くのオブザーバーを送り、分科会にも発言者として登場して中国出版界について説明しました。13億の人達をまとめていくためには今の段階での出版界の在り方が当然であるという中国の人達の考え方にも理解できますし、大きな読書人口、出版印刷力を持つ中国と世界の出版界はどう付き合っていくのか?など、今後も議論は続くでしょう。
 
“韓国は世界で最初の金属活字を開発した”と誇りと自信に満ちた韓国の人達の出版流通団地を参加者に公開して多くの人達を驚かせました。小国ながら文化面で東アジア漢字圏をリードして行くという意欲など学ぶことが多くあり、IPAの歴史に残る大会であったように思います。4年後の大会は投票の結果、南アフリカ、ケープタウンに決まり、日本は金原優(医学書院社長)をIPAの筆頭副会長として主要な役割を演じて頂きます。尚、同時に開かれた恒例の“書籍見本市”は今年“中国年”として中国出版界はPRに務めました。来年は“日本年”として私達日本の出版界は総力を上げてPRを行なうことになってます。
 
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IPA(国際出版連合)の第28回総会

IPA(国際出版連合)の第28回総会


 
2008年6月