Vol.56 西から東へ、動きだした古書業界

雄松堂の創業75周年関連の諸行事は、11月30日~12月初め、私が企画実行の任をお引き受けした“香港国際古書展”をもってほぼ終了しました。日本国内は勿論、世界中の取引関係者や主として大学図書館を始め多くの人々に、“雄松堂ブランド”を支えていただいたことに心から感謝しています。
 
ここ数年欧米の古書業界は、急速な発展を続ける中国市場に強い関心を持っています。一方、北京にある全中国を統括している中国書店からも開催の希望が国際古書展連盟(ILAB)に非公式ながら寄せられていました。中国には、印刷、出版の分野において長い歴史と伝統があることは周知のとおりですが、過去に日本や西欧の蔵書家や研究機関に多くの貴重書が中国から輸出されており、経済的に可能になった昨今、これらを再び自国の機関に正式に買い戻す動きが強まってます。
東西の接点にあるということと、長年にわたりILABの運営に協力してきた私に“中国での古書展開催企画”が依頼されたのが丁度2年位前になります。現在ILABの理事であるオーストラリア、シドニーのフェアインさんの協力を得て、企画を検討してきました。
残念ながら、日本と韓国を除いてアジアにはILABの加盟国はありません。中国書店を中心に中国の古書協会がILABの22番目の加盟国となり、“古書展”を主催したらどうかと何回か交渉をしてきました。しかし、出版物や古い文化財、(中国では1911年以降以前の物品は一切海外へ持ち出すことは禁止されています。)又、古書協会そのものも必ずしも私達が想像するような西欧型の団体ではありません。
最終的に、“香港”において中国での最初の展示会“東西文化の交流展”として開催にこぎつけました。勿論、現地香港の最大の書店(新刊書、特に洋書を取扱う書店)であるスインドン書店のリー社長の運営面での全面的な協力があって初めて実現したと思っています。
予想を遥かに超える8ヶ国、60以上の世界的に著名な古書店に出展していただき、日本からも中国との取引に関心の高い5店が参加しました。
広報活動を十分に行ったおかげで、事前のマスコミ報道は勿論、会期中のTV報道を含む取り上げ等も最高のものとなり、会場である香港のPacific Place Conference Centreは予想を遥かに超える大盛況となりました。当然ですが、中国大陸は勿論、台湾、香港の主要の図書館関係者が多数訪れ、出展者たちを驚かせました。又、香港を中心に海外留学経験等のある若い高所得者たちが現金やクレジットカードで次々に購入している姿は、丁度1970年代の日本での国際古書展当時を思い出して私自身も感激しました。
会場では海外に流出した中国の出版物の著名な古典や古地図やヨーロッパ人の手による中国研究書の中でも、特に絵入のものを中心に人気が集中したようでした。
開催の前に、私とフェアインさんから出展者の皆さんに、“歴史に残る展示会にしたいと思う、しかし具体的な商談にはあまり期待しないでください。”とお願いしましたが、多くの出展者からは今回の成功(私はそう判断しています)に対して、多大な感謝の言葉をいただきました。
今後、世界の業界は参加者の口から口へのメッセージで一斉に中国市場への注目度が高まってくると思われます。そして、今まで商品として値動きに乏しかった“中国関連古書”が注目されてくることは必至です。
来年2008年3月東京で日本古書籍商協会(ABAJ)が主催する時に合せて、今回運営に携わった3人で2008年の企画を検討することになりました。今後、歴史に残ると思われる今回の古書展Hong Kong International Antiquarian Book Fair 2007の企画責任者として日本人である私がその任を果たすことについて、誇りと満足感を持っています。
 
コロンビア大学のライアン古書部門図書館長をお招きして東京、京都で開催したフォーラムや“改造”に関する大型企画や夏目漱石生誕140年を記念した出版企画等々創業75周年を迎えた雄松堂は、現在までの歴史の蓄積を土台に、決して企業として大きくなることを考えることなく、私達でしか出来ない専門的な分野に力を入れて、世界中の多くの人達の支持が得られるような企業であり続けたいと思っています。
 

香港古書展開会式

香港古書展開会式


香港古書展会場

香港古書展会場


雄松堂展示ブース

雄松堂展示ブース


「雄松堂フォーラム」ライアン氏の講演

「雄松堂フォーラム」ライアン氏の講演


 
2007年12月