Vol.48 来るべき21世紀に向けて:荒俣宏さんとの対談(3)

コレクターと洋古書店の展望

古書業界の空模様

 
— 荒俣 氏 —
古書業界最近はどうですか?ここ2,3年ヨーロッパではお客さんが本を出したがらないので本が回転しないと聞いているのですが・・・、回復基調にあるのでしょうか。
 
— 新田 —
私も100%判っているわけではないのですけれど・・・ちょっと前までは世界的に古書展がブームでしたが、少し下火になっていますね。例えばアメリカの古書協会がサンフランシスコとロサンゼルスの交互で毎年開催している大きな古書展を、今年は両方で2月と4月に少し時期をずらしてやろうという話が持ち上がったのですが、結局出店が集まらなくて中止になりました。
 
— 荒俣 氏 —
近すぎるんじゃないですか、時期も場所も。
 
— 新田 —
そういうこともありますし、根本的な問題として本屋の側に古書展示会を渡り歩くより、本来の自分の店舗や、カタログを充実させるべきだという意識が出てきたのではないですか。神保町の本屋からもそんな話を聞いたので日本でも同じ現象が起きているような気がしますね。
 
— 荒俣 氏 —
世界全体がなにやら不況の傾向にありますが、古書業界はそういった影響は受けなかったのでしょうか。
 
— 新田 —
他のものに比べて本は評価が下がりませんでしたが、やはり様相の変化は否めませんね。両極端になりましたよ。オークションなんか見ると判るのだけれど、とんでもない値段のものが出る。こんなことが続くと相場破壊にもなりかねないし、何よりも素人の真面目なコレクターが我々の出る場ではない、と退いてしまうのではと思いますが。
 
— 荒俣 氏 —
そういえばここ1,2年大きな出物は少ないんですけれど落札するとすごい値段ですよね。
 
— 新田 —
本来は本屋もまず本を自分で買って自分のものにし、納得して値段を付けなくてはならないんですが、あまりにも破格の価格をつけられると本屋は買い切れませんから、結局買いたい人を先に見つけて仲介手数料を得るという形を取らざるを得なくなる。本屋は素通りしてただの流通業になってしまいますね。仲介能力のある本屋が元気ですよ。店は大したことがなくても、人脈を持っていて、いくらでも買ってくれるお客さんをしっかり握っている本屋が最近は強いのではないかと思います。
 
— 荒俣 氏 —
ネットワークが進んだ良い点と悪い点ですね。落ちこぼれる人がいる反面、そうして仲のいい本屋に今まで以上のサービスをしてもらえる人がいる。となると落ちこぼれる人がアプローチする方法がなくなってしまうのではないでしょうか。
 
10-1
 
 
(終)
 
2006年8月