Vol.47 来るべき21世紀に向けて:荒俣宏さんとの対談(2)

コレクターと洋古書店の展望

これからのコレクター、これからの本屋

 
— 新田 —
一世代前の日本でも古書を分かっていない人には買ってもらわなくていいという、一種の本屋のプライドのようなものがあったが、最近はこの古書展に出ている本屋にも言えることだけれど、いかにしてどれだけ売ることばかりに戦略を統一している。誰にでも売れれば売ってしまいますね。
 
— 荒俣 氏 —
昔は業界全体のことを考えていましたね。今は売ったら後はどうなってもいいという感じです。でもそういった傾向があることを考えても、21世紀のこれからの本屋はどうあるべきかということになると、やはり、本屋は商売第一にしても、とりあえず趣味人であることが大切なんじゃないでしょうか。
上の言うことを聞かずに営業する人間が勧める本、自分がこれと思う本をこの人という客に持ってくる本が面白い。趣味人で小回りの利く営業マンが見せてくれる本はやはり興味深いですよ。そういう営業は大きな本屋には厳しい。僕としては丸善にあるような、評価が決まっている確実なものは出会いの感動がないからつまらないですね。このジャンルはいい、と自分のセンスと本に対する気概が本屋は持たないと、21世紀は生き残っていけないのではないでしょうか。
 
— 新田 —
確かに日本で必ず売れるものばかり買ってきてもやはり駄目ですね。確実な客を持つことも大切ですが、一方でそうした職人の営業マンの腕を信頼して買ってくれるお客さんを掴んでいないと本屋としては難しいです。
僕が次に出てくるジャンルとして考えているのは資料型のもの、いわゆるドキュメント、オリジナル資料のコレクション、古い新聞とか言った図書館が扱うのか、博物館が扱うのか区別のない中間的なものですね。写真、絵からドキュメントにいたるまで要素は色々なものを含んでいて、なおかつ資料としてしっかりとしたものが面白い。こんな自分の考えを持つ営業マンが多いといいのでしょうね。
 
— 荒俣 氏 —
そうしたプロの営業マンを育てるのも本屋の仕事だと思いますが。
 
— 新田 —
ヨーロッパの古書店なんかだとジャンルごとに詳しい人間がいて、お客さんは自分の求めるジャンルに見識が深い店の人から色々と指導を受けられる。そういったシステムをもつ本屋と真剣に3、4年付き合えばそのジャンルの通になれる。日本の古書店もそうなっていくのが理想なんでしょうね。
 
— 荒俣 氏 —
我々コレクターと書店のコミュニケーションの関係が、また21世紀はもっと密接になって欲しいと思いますよ。少し前まで何か一つのジャンルを日本にいて勉強したいと思ったら数十年かかりましたが、ここ数年日本にいてもインターネットで世界中の本の情報も得られ、海の向こうの古書店とも付き合い易くなったといういい状態にはなっている。本の真の価値を判る人間がもっと本の情報交換をして、本について語り合えると、さらに日本の本屋もコレクターもバージョンアップできるのではないでしょうか。いい本を回転させるには売り買いの関係がより良くならないと。
 
21世紀のこの業界は、いい本が回転しているかどうかにかかっていますしね。何か最近いい本が出てないんじゃないかと心配していたのですが、今回の会長の話で安心しました。いい本が回転して、みんなが見る機会が増えれば日本人の本物の価値という物もより理解できるようになると思います。
 
10-1
 
2006年6月