Vol.46 来るべき21世紀に向けて:荒俣宏さんとの対談(1)

荒俣宏さんとの対談

20世紀もいよいよ幕を閉じようとしていた1999年(6年も前のことですが)、私は、あるメディアの依頼で、折から開かれていたABAJ主催の古書展会場のあるホテルで、荒俣宏さんと1時間ぐらい対談させていただきました。いくつかのテーマに分けてのことでしたが、いずれも“21世紀古書業界”が共通テーマでした。
これから数回に分けて、その中でやはりその通りになったと思えることを掲載させていただきます。
 
April. 1, 2006
雄松堂書店グループ代表
新田満夫
 

■荒俣 宏(あらまた ひろし)作家
 1947年東京生まれ
 慶応義塾大学法学部卒業後、日魯漁業入社、コンピュータ室勤務ののち、翻訳・文筆活動に入る。
 現在、文学の翻訳、博物学研究、小説執筆などの幅広い著述活動をしている。

 

来たるべき21世紀に向けて コレクターと洋古書店の展望

21世紀の古書販売、On-Lineビジネスについて

 
— 新田 —
ネットが次第に普及してきて書籍の買い手も売り手も新しいアプローチの仕方を探っています。今回のテーマの一つであるOn-lineビジネスもその一つですね。本屋も小さいものはインターネットで売ろうという傾向が大分進んできました。売り手も買い手も新しい情報手段で取引をしたほうが早いと、大分 On-Lineビジネスが浸透してきましたね。今までそういった取引の情報を扱っていたアメリカのアンティコリアンブックなんかが年々薄くなっていくのを見ると時代が変わってきたなと実感しますよ。
 
— 荒俣 氏 —
昔だったら安い本は現地に行かなくては買えなかったのですが、下手するとほとんどOn-Lineで買えるじゃないですか。僕なんかここ30年探していた安い本がこの1、2年で大分手に入りました。
 
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— 新田 —
外国の古書業者は日本人向けインターネット商売が割合伸びている傾向にあると言いますね。なぜか他の国に比べ日本のコレクターはコンディションを気にしないのでオンラインで古書を買う・・・オンラインはコンディションを表現しにくいから、状態の善し悪しを気にしない日本人は格好の顧客というわけです。
 
— 荒俣 氏 —
いい客なんですね、日本人は。実は僕もここ1年くらいインターネットで買い物しているんですが、アメリカなんか On-Line にかかる費用が安いから、少なくとも現地まで行って何日も本屋を渡り歩く手間、暇を考えますとついコンディションは後回しにして、欲しかったものが手ごろな価格で出ていたら買ってしまいますね。
 
— 新田 —
6時間くらいちょこちょこパソコンの前でやっていると10冊くらい簡単に買ってしまっていると言う人の話を聞いたことがありますけれど。
 
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— 荒俣 氏 —
実際そうですね。本を探す人間にとって一つの改革ともいえる書籍の検索システムは本当に便利ですよ。サブジェクト、オーサーで一気に自分の欲しい本を引っ張ってこれてしまうものだから、次々欲しい物が出てきてしまいますね。
 
— 新田 —
小さくて細かいもの、値段の安いものはインターネットで簡単に手に入れられるようになったから、そういうものを店先に積んであるような種類の小さな店が段々なくなっていってしまいますね。その替わりバーチャルショップは本のコンディションまでなかなか表現しにくいものだから、どうしても詳細なコンディションの情報が必要な稀覯書、今回のABAJで取り扱われているような豪華で高価格な本を古書店がどんどん扱い始めるわけです。
 
— 荒俣 氏 —
やはりオンラインはリスクが大きいですから、そういう高いものはいくらOn-line ビジネスが進んでも昔ながらの方法になるんじゃないでしょうか。
 
— 新田 —
そうですね。インターネットでロットの高いものは買いにくいし、売りにくいですよ。
 
— 荒俣 氏 —
インターネットを見ているとやはり売りに出ているマックスは1万ドルが限界ですね。僕なんか買うものは100ドル、200ドルのもの。500ドルのものは買いませんね。
 
2006年4月