Vol.44 秋、活字文化を改めて考える

毎年10月、11月は私達の周辺で“本”についてのさまざまな催しや会合が開かれたり、興味深い事柄が語られる“秋”でもあります。最近、私自身が参加したり、実感したいくつかの件について改めて考えてみると、“本”を取り巻く世界に非常に大きな変化が起こっている気がしてなりません。
 

  • 文字・活字文化振興法のスタート
    今夏、議員立法で成立したこの法律をうけて、10月27日を“文字・活字文化の日”と定めて全国的に大きなシンポジウムが開かれました。この理念法をベースに、これから官民協力して文字・活字文化の価値を高めていけるかが問われています。
    法律の中で、“本を読むこと”“図書館とそこで働く人達の充実”、さらに学術文献出版や翻訳出版の困難性を国が認めることが明記されて注目されました。
    活字文化“本”の無い国が平和な文化国家と言えるでしょうか。
  • ◆出版界と図書館の共存
    出版界の立場、図書館の立場、それぞれがグローバル化、IT化時代の中で、どう共存し、どう発展充実していくか、いくつかの会合がありました。“著作権”の問題、そして“陽と影”の両面がクローズアップされてきているIT化時代の中で、図書館、出版界はどうあるべきなのか、重要な問題が示されつつあります。勿論、予想をはるかに越えて前進しているコンテンツ情報の変化を止めることが出来ないことは周知のことです。
  • ◆国際アンティークブックフェア
    私共で毎年続けている“国際古書展”は今年は第30回記念として駿河台下の東京古書会館をお借りして開催しました。一人でも多くの人にこの国際的な価値をもつ文化的資産としてのアンティークブックに興味をもっていただけるように、新しい試みを実施しました。
    西欧のアンティークブックは、今まで殆ど学術書として大学図書館を中心に収められ、特に1990年前後、日本は世界有数の市場として数々の名著を輸入してきましたが、まだまだ日本の古書に比べて市場は小さい。この現状をどう打破していくか、私共の役割は大きいと自覚しています。
  • ◆本の盗難対策
    明治大学図書館のご協力をいただき、10月7日、同館にILAB(国際古書籍商連盟)副会長であるシュタインバッハ氏を招いて、“本の盗難”対策問題に対応するHome Page のトライアルについて質疑応答の機会をもちました。
    オークション等の一般化で“古書が高価な資産価値”と判ってきた時、盗難の問題は今後大きな課題です。
  • ◆世界の業界の流れ
    この2カ月で日本を含む世界各国で古書専門店が倒産したり、閉店したというニュースがいくつか流れました。又、伝統ある著名書店が全在庫をオークションを通じて販売し、後継者に引き継ぐことなく廃業しました。ネット販売の活発化により利益が激減し、将来性に見切りをつけたものと思われます。著名な本がファンドを背景にもつ大型書店や、投資型の商品として古書を収集する一部機関に集中していく傾向をどうみれば良いのでしょうか。その他活字本、マイクロフィルム型の本、さらにデジタル化した本についても、それぞれに企業の吸収合併やコンテンツの売買が欧米市場で急速に進んでいます。

丁度このNews from the World of Books Vol.43が私共のHome Page に掲載される時、11月30日~12月2日、パシフィコ横浜で“第7回図書館総合展”が開催されていますが、期間中、情報、図書館関係の学会や協会、そして外資系を含める出展者が主催するセミナーや研修会からも、最近の大きな変化の中で、それぞれの立場の人達が夢、不安、迷いを感じながら、現在からの転換に努力している姿を実感出来ると思います。
 
2005年12月