Vol.43 モントリオールにて

ILAB (国際古書籍商連盟)は2年おきに開く(昨年は大会としてオーストラリアのメルボルンで開かれた)総会と同じ権限をもつ、加盟20カ国の会長、又は委任状により出席する代理人を招集して開く会議を“加盟国会長会議”と呼んでいます。
私も加盟国、日本のABAJ(日本古書籍商協会)会長として、16年ぶりにカナダのモントリオールで開かれたこの会議に出席し、9月20日~24日、延べ15時間に及ぶ長時間の討議に参加しました。勿論、正味5日間の内には食事会、主催国が企画した小規模の古書展やカナダで最古の歴史を誇る名門マギール大学図書館等の見学も含まれてはいますが、それらの時間も含めて、私達業界が直面している共通の問題点や危機感等についての熱心な討議に終始しました。
この“加盟国会長会議”は、各国の代表者は加盟20カ国と準加盟10カ国を含めて30カ国、2,000に近い専門業者の声を反映して討議に参加し、決定事項があればルールとして各国に持ち帰らねばならないため、最終的に投票し決議に導くのは多難なことと思われますが、理事会や国際組織の会長(現在はアメリカのフレック氏)としては常に前に進む必要があるので、難しい問題を白熱した討議を経て、予定した時間内で進行することが強く求められています。
私自身この10年以上はILABの理事としてもABAJの代表としてもこの会議に参加していなかったので、昨年から改めて会議の空気を体験したわけですが、以前の、出席者の多くが業界主要企業の代表、サロン的なヨーロッパ風の会議に比べて、大きく変化していたことに驚きを感じました。
会議そのものの様子で気付いたことをいくつか挙げるとすると、

  • 参加者が以前より10才位若くなった。
  • 欧米では“議事法”に基づいて行われるケースが多く、予定(事前に通知済み)議題を議事法に従って進め“決”をとっていくので、多くの議題が決定できる。
  • 正式な会議の前に長時間予定議題について非公式の意見交換が行われている。

 
次に今回の会議で印象に残ったことや決議されたことについて報告すると、

  • “本”はITの進歩の中で、ウェブサイトで広告し販売するのに最適な商品(アマゾンの大成功にも例えて)と思われ、ILABもいち早く世界共通のサイトの作成に資金を投入、事実、比較的廉価なものについてはサイトによる売上が急速に増えた。(しかし、古書という同一の商品でも一冊一冊が保存状況によって大きく評価の違うものについて、業者同志、お客様との間でトラブルが多く、大半の有力業者が共通サイトに情報を流さなくなり、(一方、各自が独自のサイト戦略を採り出したりして)問題を提起している。
  • 世界的に図書館等で急速にデジタル化が進み、研究用としての古書の需要(予算も)低下傾向が続く。一方、非常に著名な商品は資産としての購入者が発生し、業界もこの分野に向けて特化していくので、価格が上昇している。
  • ウェブサイトの進歩により、図書館界と共同で構築している“盗難本”の対応システムは、完成に近づいている。
  • 展示会専門業者から、北京で2007年に大規模な古書展を開く企画が示され、参加者に驚きを与えた。

 
総括してみると、成功型、非成功型に業者が二極化し、またアメリカ型とヨーロッパ型、そこへ英、仏、独等の言語圏と中国市場等への注目等、多種多様であり、新しい、しかも業界そのものの未来について、必ずしも共通の見解の一致はみられませんでした。
モントリオールへの途上、サンフランシスコでスタンフォード大学の図書館長さん、カリフォルニア大学バークレー校の図書館長さん、そしてモントリオールではマギール大学の図書館長さんとお会いする機会をもてましたが、貴重書の保存への対応とデジタル化計画、それらに対する企業、政府、そして図書館間の協力体制がアメリカ国内、ヨーロッパ内、そしてその輪はアジアに向けて着実に、しかも急速に進んでいる現実に接し、私達出版、流通の業界にある者の役割に危機感を強めて帰国することになりました。
 
2005年8月