Vol.39 古書業界の浮沈はITをどう使いこなすかにかかっている

現在、私が会長をお引き受けしているABAJ(日本古書籍商協会)は、古書業界の国連に似た国際組織であるILAB(国際古書籍商連盟)の加盟団体として、世界21カ国約2,000社の有力業者と歩調を合わせて活動しております。
昨年秋、創立40周年を迎え、昨年から今年にかけて諸々な行事や事業を展開しておりますが、去る1月13日、ABAA(アメリカ古書籍商協会)の会長であるジョン・クライトン氏をお招きして、私ども業界人を対象に“アメリカ古書業界の未来と展望――IT、オンラインビジネスが古書業界に与えた影響”をテーマとして講演会を行いました。
今回はこの講演の要約を皆様にお届けすることにいたしますが、講演後の質疑応答も活発に行われ、業界人に大きな話題を提供しました。
 

米国古書業界の現状(J・クライトン氏講演)

1990年代後半以降にインターネットが古書業界に与えた影響は、(1)データベース化された古本や稀覯書をオンラインで容易に検索可能、(2)「どの本を誰が持ち、価格や出所は」という市場調査も簡単に、(3)地方の古書店が有名店と並んで同じ値段で販売可能--など。これにより、「本の探し方、探す本の種類や買い付けた本の根付けなど商売の方法に変化が起きた。」
例えば、一般人が容易に検索・購入できる文芸書の初版本などネットで手に入る古書の買い付けをやめ、扱いを稀覯書に絞ることで市場の変化に対応。その結果、売上は前年より増えた。
一方で、(1)古書店の多くが閉店、(2)市場に対する書店の影響力の弱まり、(3)不正確に表記された本や盗品などの不正な売買--といったマイナスの影響も見られるようになった。
「これまで我々が商売を行ってきた伝統的な場は、明らかにネットによって取って変わられつつある。」「これからの古書店は自身の専門領域を熟知し、情報世界の道具と、伝統的な道具の両方を使いこなせなくてはならない。」
それでも、「新しい時代に対応しようと必死に努力して、そのために失敗した書店はない。むしろ、かつて苦しんでいたところでも、新時代に果敢に挑戦したものは繁盛している。
 

J・クライトン氏講演 会場にて

J・クライトン氏講演 会場にて

現在のABAA会員・約460店の総売上は「ほぼ安定している。」ほとんどの会員がオンラインデータベースを利用し、自社サイトを立ち上げ、ネットに対応していった結果でもあった。
ただ、加速するデジタル化の流れには懸念する面もある。アメリカのグーグルが最近発表した「図書館の蔵書の無料公開」については、「印刷された本が駆逐されることはないが、この変化は書店の将来にとって大きな課題となる。」同事業に協力するスタンフォード大学図書館のマイケル・ケラー館長が「今後20年間で世界のあらゆる知識がデジタル化され、無料で入手できるようになる」と見通していることから、書店が市場における本や情報の流通を制御することがますます難しくなってくる。

 
なお、このまとめは、取材された“新文化”の要約を利用させていただきました。又、ABAJの創立40周年行事は1月14日には六本木ヒルズで“荒俣宏氏と高宮利行氏の対談――本を集める楽しさ”そして28日、29日両日は世界からの5カ国16店とABAJ会員24店、参加“40店”による国際古書展が盛大に開催されましたことを多くのメディアに取り上げていただきました。また、ご来場頂いた方々に、この場を借りまして、厚く御礼申し上げます。
 
2005年2月