Vol.34 洋書市場の動向

雄松堂グループの業務は、基本的には海外から主として人文社会科学分野の学術専門書や情報を輸入し、その内容を精査して日本国内の研究機関にご購入いただくことがその大半を占めています。
洋書輸入を主たるビジネスとしている企業で組織している日本洋書協会という団体があり、私も理事を務めておりますが、戦後、1960年頃から書物の輸入が自由に行われるようになって、研究者である先生方や図書館の人達と協力して、世界津々浦々から書物を輸入してきました。業界人として心のどこかに日本の産業、文化の発展の裏方として立派な仕事をしてきたという自負や誇りをもっていることも確かです。しかし、私達は出版社の立場ではなく、基本的にコンテンツの創造者ではありませんでした。輸入した商品を日本の市場に適応させるよう努め、付加価値を加えることによって、企業としてのアイデンティティーを維持してきました。
 
“本は誰から、どこから買っても同じ情報を得られる”“購入方法を検討すればずっと低価格で取得できる”“なぜ日本の業者から買うと消費税がかかるのか”“オンラインで、ほぼどの本も入手可能だ”
 
今、いろいろな声が耳に入ってきます。どれも正しい意見だと思われます。
確かに印刷物(種々な手続き上の事情があって)は輸入段階で消費税がかかりません。今後10%の税がかかるようになると、外国から直接買った方が安いという実感がさらに強くなるでしょう。また、輸入書は日本の出版物のように再販制度による価格維持の制度は存在しません。 今、日本の輸入業者は、ついこの間まで1ドル=送料や手数料を含めて150円位で販売していたのを120円位に大幅に値下げしています。“価格競争”を起点とする売り手側、買い手側両者で進められている合理化の結果については想定できません。はっきりした結論に導くことは全く不可能ですが、最終的に利用者に有利で、私達が仕事のやり甲斐があるようになればと思っています。現段階で海外学術情報の日本への導入は今後どのような流れに変わっていくのか、私の私見をまとめてみることにします。
 
● 科学技術の分野では急速に、人文社会科学の分野でも徐々にOn Line Digital型のものに変化していく一方、活字情報も健在し、決して市場が小さくなるとは思わない。
● 販売業者も出版社の立場として発言し、ものを考えることになるためには自らもコンテンツを造る。しかも日本市場を意識したものを築き上げる努力が必要で、海外の版元と共同、協力型の企画も増えると思われる。
● 学術書、情報の市場は今後も日本では少しずつ増え続けるであろうし、特にアジアの中で日本型の企画が増えてくると予想している。“漢字圏”の成長。
● 全体的に世界中で同一の書物(データベース等も含む)はその国の物価、購買力等に合わせて調整する動きが出て来る。それに伴い、著作権の話も話題になると思われる。
● 出版社も世界規模の超大型と超専門的なものに二極化するであろう。
 
ハリー・ポッターの日本語訳版が発売される前にオリジナルの英語版が日本市場に登場します。日本語版を待ちきれずかなりの人達が購入していますが、日本の洋書市場は雑誌も含めて1,000億円前後と言われ、日本の出版市場の5%足らずです。今後、外資も含め、日本の大手版元も日本の洋書市場の拡大にむけて努力することでしょう。諸外国でみられるようにせめて10%の市場に拡大した時、現在の輸入専門業者が古い考え方を変えきれず取り残されるようなことのないよう業界のためにも微力ですが頑張ってみたいと思っています。
 
2004年4月