Vol.20 ニューヨークのテロ事件と古書業界

9月12日のニューヨークWTCのテロ事件は、すぐに私共の仕事に影響が出ました。海外からの荷物の到着の遅れは今も若干影響が残っています。WTCビルのすぐ横にあったミレニアムホテルの前のビルに私共と取引のあるアベビルプレス(オーディボーンの「アメリカの鳥」のファクシミリ版を出した会社)は、連絡が取れなくなりました。ビルは地図で見ると倒壊したらしく、早速、お見舞い状を送りましたが、未だコンタクトが取れません。
 

事件後のAIBに出席して

直後、17日からスペインのバルセロナで開かれた国際ビブリオフィル協会(AIB)の大会に出席するか否か迷いましたが、大会実行委員会からぜひ来て欲しいとの連絡が入り、思い切って15日に発ちました。ロンドン経由でしたが、乗り継ぎで大変時間がかかりました。「早い!便利!」の時代は終幕を迎えつつあるのかもしれません。ところがスペインに入ると、夏も終わり、お祭り気分で明るく元気で、あまりWTCのことは話題にしません。テレビのCNNのみがほぼ全時間、情報を流し続けていました。残念なことに大会は、200名参加予定のうち、アメリカからの20余名がキャンセルになりました。それでも会期途中の20日頃、カナダ経由やアジア経由で数人集まってきました。スペインの古書、マニュスクリプト類は、貴族中心の国であっただけに、今も個人、国を通じて立派に残されていました。バルセロナ、バレンシア、マヨルカと、延べ18の図書館、文庫を見て回りましたが、スペイン独特の蔵書構成でした。また、多くの立派なカタログ類が作られていたことには驚かされました。AIBは公用語が英語、仏語なのですが、図書館の方やコレクターが長々とカタロニア語でスピーチしたので、内容が良く分かりませんでした。1999年に日本で大会を開いた時も、日本人のスピーカーの日本語に十分通訳が対応できず、参加者に満足していただけなかったのではないかと思いました。
バルセロナで、国際出版連合のビセンス会長に夕食に招かれました。その際、10月のフランクフルトブックフェアのことを心配しておりましたが、やはり今年の参加人数、出展数共に減少気味で低調でした。
日本の大手出版社がキャンセルした等、新聞でも話題になりました。
 

オークションで見た古書業界の“転機”

実は10月はじめ、ニューヨークで大きな古書のオークションがあり、世界のコレクター、実際にはアメリカの人達がどう反応するか興味があり、話題を集めたのですが、全体的には低調でした。しかし、超目玉、トップクラスの品は、予想をはるかに越える落札になりました。何故でしょうか。当社が15年位前、日本のお客様に6,000万円位で納めたシェイクスピアの1623年の初版がなんと6億円に達しました。古書の場合、一概に比較はできませんが、両方のコピーを見た私としては、この高価に驚いています。しかし、世界の古書業界の低調は続いています。書店やコレクターが現金を必要としているのか、誰か分からないニューリッチ投資家に向けてか、12月初めもニューヨーク、ロンドンでオークションが控えています。
今まで積み上げてきた考え方がどうも通用しない時代が近づいて来たようです。心を引き締めて“世界の雄松堂”のブランドを守っていきたいと思っています。
 
2001年12月