Vol.2 これからの出版業界市場

神保町のスポーツ用品店にて

先日久し振りに神保町のスポーツ用品店が軒を並べている所を歩く機会がありました。今、各店とも冬物の新製品の売り出しで、大キャンペーンをはっている最中です。今年は早くからスキー場に雪が降ったのでスキー板のセールが特に目にとまりました。  

 10年位前は各店には世界各国の有名ブランド品が10種類ほど並んでいて、色、デザイン、機能、価格等を競っていました。お客さん方もそれぞれのブランドと長いお付き合いがあり、固定ファンになっていたと記憶しています。今年の店頭の品揃えで驚いたのは、質・量共に中心になっているのが一つのブランドであったということです。もちろんこの主力のブランドの両側に非常に高級だったり特別仕様のものが有ることにはあるのですが、なんと言っても一つのブランドが他のブランドを圧倒していたことです。無論そのブランド品にも様々な種類や価格帯の商品がありますが、いずれにせよお客さんはこのブランドを買わないと、何か肩身が狭いような気持ちに追い込まれるのかもしれません。国際的なブランド戦略の恐ろしさを痛感しました。
 

出版業界のマーケットで起こりつつある現象

このことは私どもの業界にも似たような現象は起こっています。

 例えば法律に関する判例等の情報提供ビジネスは、私たち出版業界の中でも特殊ですが大きなマーケットを持つ分野です。日本だけでも4~500億円、世界中だと1兆円に近い売り上げがあると思います。最近、日本国内の法律事務所の図書等、輸入法律文献のロゴ・マークがほとんど大手2社に占められていることに気がつきました。つまり極端な言い方をすれば、世界の大手社が次々と吸収・合併を進めている、顕著な現れのひとつと捉えることが出来ます。上で述べたスポーツ用品店同様、大手大資本の経営戦略を垣間見た気がしました。
 

市場の転換期における対応とは

オンライン・ビジネスはこの傾向に拍車をかけています。インターネットや衛星通信のメディア・ネットの発達は商品の企画や流通システムを一挙にグローバルなものに押し上げました。一地域、一国だけで人気のある商品では本格的な競争に勝てない時代となってきたと言えるでしょう。だからといって、“何でも大きなスケールでやっている企業”となるために吸収・合併、統合すると言うことは最後には適正な競争をなくし、大手資本の独占市場となる危険性をはらんでいます。 オンライン・ビジネスの時代であるからこそ、視点をスケールの大きさに向けるのではなく、より特出した部門を深く、高度にしかもグローバルに展開することが、長い目で見ると非常に重要ではないでしょうか。

 日本の某大新聞社が良書の出版を手がけてきた老舗の出版社を“日本の出版文化を守るために応援する。”といって乗り出しました。これが真意だとすればこのような型の吸収等は望ましいことかも知れませんが、やはり出版業が文化事業であり、文化の担い手であるとすれば、専門を持つ中堅の会社が十分仕事を出来るような状況こそが必要であると思います。

 これから日本の市場も含め大きな転換期となるでしょうが、私たちの出版業界も専門化、国際化をどう捉え、システムの有り様をどう考えていくのか見越していかないと、将来性がないかも知れません。21世紀にどんな構想をもつのか今問われています。
 
1998年12月