Vol.18 苦難の出版界、そしてソウルでの出来事

今年の東京は一月早く夏が来たようで、雨も少なく、6月~7月にかけて猛暑が続きました。政治、経済共に“改革”のかけ声が響き渡り、戦後50余年の今、私達にとっては何か先行きに不安を感じる、かつて経験しなかった日々が続いています。
 前回も触れましたが、5カ年で10%位売上が減少している出版界は、特に最近、具体的な例として、かなり有力で歴史のある大型小売店の不振、さらに倒産がニュースとなり、厳しい状況が表面に出てきました。
合理化にも限度があり、徐々に版元のところにもいろいろな問題の波が押し寄せてきています。“良い本を造れば売れる”マーケットを信じて努力してきた出版人にとっても、“変改”“改革”の波はそこまで来ています。IT革命に乗り遅れるな、といった種々な試みは、本格的なものから単なる思い付きまで、出版、出版流通の各分野で目立っている昨今ですが、私にはこれが本当の自己改革とは思えません。
 5月末から6月にかけて6日間、前半はアジア太平洋出版連合(APPA)の総会に日本の書籍出版協会代表団の一人として、後半は日本ビブリオフィル協会研修ツアーの責任者の一人としてソウルに出かけてきました。
 ずっと日本で引き受けてきたアジアの出版界をまとめてレベルアップする仕事を、今年から韓国の出版界の人達にバトンタッチしました。会期中の分科会、また食事の時などで、お互いに出版人同志として率直に“教科書問題”を話し合いました。私達出版人は“出版の自由”という長い苦難の歴史から勝ち取ってきた誇りと責任を、政治の力等で干渉されることに強い抵抗を持ちながらも、この問題が“出版の自由”という原則の線上で上手に解決できればと期待しています。
 ビブリオフィル(愛書家)の会では、今回特に韓国の活字、印刷の歴史、そして日本への流れについて、従来考えられなかったような具体的な調査をすることが出来ました。韓国愛書家協会の呂さん、国立図書館、東国大学図書館等に感謝し、改めて韓国の印刷史に対して興味を深めました。
 
2001年8月