Vol.13 アジアの出版界について

北京にて

アジアの出版界は今、近い将来大市場になることが期待され、世界の出版界に大きな影響を与えつつあるという面から重要視されています。
そのアジアの出版界の重要な公式、非公式の会合や行事が、去る8月27日から北京で開かれました。私自身も日本書籍出版協会(書協)の国際委員長として参会いたしましたので、ここでいくつか私達出版関係者にとって興味深いポイントを皆様にご報告し、さらに各方面のご意見等を伺えたら幸いに存じます。
 

アジア太平洋出版協会

中国出版協会(中国出版工作者協会:PAC)の設営により2000年度アジア太平洋出版協会(APPA)の総会とフォーラムが28・29の両日開かれました。アジア地域には出版界の国連のような存在である国際出版連合(IPA)が、IPAの基本理念である「出版の自由」や「著作権の保護」について問題があると判断している国で、現在未加入の国があります。APPAはそれらの国々、例えば出版大国中国(PAC)等にも参加してもらい、IT革命の中で共に出版界の向上と交流をめざし、6年前に日本の書協(JBPA)が音頭をとって東京で発足した協会です。現在15カ国が参加し、2期にわたりJBPAの会長がAPPAの会長職を、そして事務局等をお引き受けして来ましたが、今回初めて韓国出版協会のNa会長を会長に選び、APPAの基礎が一段と充実したものと思われます。2001年度総会は新会長の地元ソウルでの開催が決定しました。
今回、APPAのフォーラムのテーマはIT時代の著作権の保護と出版界のあり方についてでした。中国・韓国のスピーカーと共に、文化庁の国際著作権課の遠藤氏の英語による講演もあり、日本政府も本格的にこのテーマに乗り出してきた感を受けました。政府のIT 重視策のバックアップが期待されます。
 

APPAの現在と問題点

今回の訪問で中国の出版人と十分対話をする時間を持ち、国をあげての経済成長に伴った意欲的な中国出版界の質、量の発展を実感しました。12億人の人口をもつ中国の出版活動は世界、特にアジアの出版界はもちろんのこと、間接的に世界の紙の需給、印刷業界にまで与える影響が大きいと思われます。
APPA が毎年AWARDSを行っているAPPA 会員国内の出版社間での共同出版、翻訳出版も大きく開花し、乙武洋匡さんの『五体不満足』や江戸川乱歩さんの『怪人20面相』が中国版でベストセラーになっているのには驚かされました。
元来、中国はWTOへの加入を待たず、その規模、実績から当然IPAには参加する資格があり、IPAから加入の要請があると期待していますが、ヨーロッパの古い出版創始国が運営の中心を占めているIPAとしては、過去の長い出版の歴史の教訓から、加入条件の原則は公式には譲れない面もあります。今回中国はIPAのビセンス会長(スペイン)他、幹部を招きIPAと中国、IPAとAPPAのリーダーとしての日本等々と非公式に対話を持ちました。結論として中国他2、3のIPA非加盟国を会員としているAPPAをIPAの地域会員として加入を認め(他に中近東、東ヨーロッパ、カリブ地域等の例があります)APPAのNa会長をIPAの常任理事に自動的に推挙する事となりました。
 

北京国際書籍展

30日には北京国際展示場で北京国際書籍展が10万人の来場者を予定して、華やかに開かれましたが、大きな国土の中で必ずしも出版物の流通網が整っていない中国市場にむけて、欧米の学術出版社等の出展(日本においては輸入販売専門業者が充実しているので必要性が乏しいが)の数に驚かされました。
 台湾からの出展も目立ちました。90%~95%が活字による出版物であり、「ITはビジネスになりませんよ」と展示者側が揃って言っていたことは、考えさせられることが多かったように思われます。
 

これからのアジア

いずれにせよ、中国と台湾の出版協会の問題をはじめ、原則論で言いますと問題も多いのですが、現実はスピーディーに変化が進んでいます。世界の半数以上もの人口を持ち、識字率の高いアジアのアイデンティティーに支えられながら、出版界の大波が動きだした様な気がします。
今回APPA総会で会長職を去る日本の書協の渡辺会長の「文明は大いに利用すべきだが、文明によって、私達がそれぞれ築いてきた誇るべき文化が滅ぼされたり、ゆがめられたりしてはならない」という発言は会場から強い賛同を得ました。
 
2000年10月