Vol.12 ネット販売とお客様の満足度

雄松堂グループの代表者としてこんなコメントを発表すると「時代おくれ」とお叱りをうけるのは当然だと思います。ネットを通じて世界を相手に「本を商っていく思い切った発想の転換を進める」方が当たり前なのかも知れません。

勿論、私もEコマースと言われるネット取引こそ人員削減、在庫不要、営業領域の拡大等、経営のスリム化・国際化の必須の条件であることは、毎日の新聞や雑誌をはじめとするマスコミが当然のように伝えておりますし、十分理解できると思っています。
 

国際出版連合の大会において

私は5月初め、日本書籍出版協会の代表団の一人として、南米アルゼンチンで開かれた国際出版連合の4年に1度の大会に参加し、パネリストの一人として発言するチャンスがありました。前回のバルセロナ大会から4年という短期間で、世界の出版界の様相や勢力図が大きく変化したことには驚かされました。

予想をはるかに上回るインターネットの発展、そしてそこに生じる著作権、出版権の領域・・・その中で出版界がどう利益を確保するのか、連日かなり白熱した議論が展開されました。

大会の最後に「出版の使命は何ですか?本とは人間にとってどんな意味を持っているのですか?棚から本を取り、机の上に置いた時に、私たち人間は本から何かを教えられているのです。」という南米の著名な作家の発言がありました。ネットとペーパー、英語圏と非英語圏、富と貧──情報媒体の違いや環境の違いを超えて本が文化の担い手とすると、その持つ意味の深さ、そして出版人としての責任の大きさを痛感しました。
 

数字を追うより

高度情報化の時代、顧客こそが決定権を持つ、言い換えれば顧客サイドが生産者の立場に立つと言って過言ではないでしょう。こうした状況下において、私たちは常にお客様の立場に立ち、お客様の五感にうったえる商品を提供しなければなりません。五感にうったえる販売方法とはどのようなものでしょうか。

商売の本質は“人の心”を動かしてマーケットを作り上げることです。ネット販売は情報伝達、販売手段としては十分有効といえますが、本当に顧客の心の満足を得られるか、と言う問題に関しては疑問の余地が残ります。「足で稼ぐ」、「多くの人と会う」努力をしている営業担当者をどうサポートしていくかということを、会社全体の組織が考えるべき時です。

情報の氾濫による社会の過渡期にあって、最近の雑誌に掲載された有名な経営者の「数字を追うより顧客を追え」という言葉が印象的でした。
 
2000年6月