Vol.102 大学資料費予算の増額を訴える


大学資料費予算の増額を訴える

昨今大きな話題になっている新国立競技場建設計画が100年の計に立って納得のいく結論が出ることを期待しています。その予算が高いのか安いのかは私にはよくわかりませんが、2000億円や3000億円などと聞くと、つい日本中の大学の資料費予算と比較したくなってしまいます。国内の国公立、私立大学、短大等の資料費(新しい電子メディアを含め)は、和書、洋書合わせて1000億円強で(そのうち洋書類は700億円前後)、これですべてです。国は最近、人文社会科学系の予算を理科系に回すべきであるとの方針を打ち出していますが、その一方で、研究者は、学問の基礎を深く学ぶ人社系を大切にすることが日本の将来や文化立国日本のために必須であると強く訴えています。

 
今秋には、海外発信の電子情報に消費税を課税することが決まり、また海外の版元は、さらに大型化、寡占化を強め、値上げを進めています。結論から言えば、大学の資料費の20%ぐらいがこの部分で占められ、一般的な新刊本や、資料の購入予算が減ることになっています。

 
上記の国立競技場建設も重要ではありますが、政府は新年度予算で資料費を増額すべきと私は訴えます。戦後70年にわたって、日本の学術研究のために一生懸命資料を大学に納めさせていただいた業者の誇りと本に対する愛着をかけてこの問題を提起したい。

 

紙か電子か?

最近アメリカの図書館関係の雑誌で、”電子媒体は今後ますます広範囲で利用され、特に理工学系の学術雑誌や即効性を要求される分野で成長が続くことが予想される。今後、市場が拡大して安定期に入り価格も安定してくるであろう。特にIT時代に教育をうけた世代が研究者の大半を占める時代になり彼らが加速の原動力になるであろう“という記事を読みました。同じ方が一方で紙の本について、“紙の持つ優しさ、温かさは電子媒体では絶対に無理である。買ってみたいと思う内容(多くは大企業が版元となっている 電子媒体では採算のとれない)やすぐれた造本などいつまでも蔵書として残しておきたい本を造ってほしい“と書いていました。

 
私は50年”本屋です”といい続け、それを誇りにしてきました。私のおつきあいいただいている方の中で、特に海外の版元さんや図書館の方は、立派なITの推進者であると同時に大変な愛書家である場合が多いです。昨年アメリカで超大手のデジタル出版社のトップと商談をした後の食事の席で、彼は最近のオークションで、羊皮紙に印刷したケルムスコットプレスの小品を思い切って買ったと自慢していました。彼はIT関係の大手の編集長として著名な方です。

 
人文系か理系か、紙か電子か、図書館不要論など、どうも日本人はどちらか一方を選び、一斉に動き出す国民性があります。安保法案にしても世界から愛される日本、日本人になるため、多様性のある国家をめざして、100年の計に基づいて歩みだすべきではないでしょうか。

 

雄松堂秋のイベントについて

今年も11月10日から12日まで、パシフィコ横浜で、第17回図書館総合展を開催します。毎回、図書館の意義、利用する人の立場に立った図書館等について考える場となっており、現在鋭意準備が進んでいます。9月には具体的な内容を公開し、セミナーの申し込みも始まります。図書館総合展ウェブサイトを通じてお問い合わせください。年々盛大になってきている図書館総合展にいつもご協力いただき、主催者代表として感謝いたします。
YUSHODO-MARUZENのブランド統合によって、今以上にどうしたらお客様の要望にお応えできるのか、専門家の意見を聞きながら検討を続けています。書籍市場の下降が続くなかで、少し長期的な視点に立ち今こそ英知を集めて、検討すべきと思っています。11月の図書館総合展のころから協同による幾つかの企画をご紹介できるよう準備をすすめておりますのでご期待ください。
 

第16回図書館総合展

第16回図書館総合展

 

 

2015年8月

 

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