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■ 近現代ドイツ史、文学、ジャーナリズム研究の進展に期待

広島市立大学 広島平和研究所  竹本 真希子 准教授

 「黄金の20年代」と呼ばれたドイツの1920年代において、新聞や雑誌は「ヴァイマル文化」の形成に大きな役割を果たした。そのなかでもとりわけ名高いのが『フォシッシェ・ツァイトゥング』(Vossische Zeitung、『フォス新聞』)である。『フォス新聞』は18世紀以来の伝統を持つリベラルな新聞で、ナチ体制下の1934年に廃刊に追い込まれるまで、ドイツ全土で読まれていた。

 ヴァイマル共和国期は、『フォス新聞』自身の歴史のなかでもとくに輝かしい時代であったと言えよう。同紙には、当時の政治や文化を代表する知識人の名が多く並んでいる。編集長を務めたゲオルク・ベルンハルトはドイツ民主党に所属した政治家でもあり、編集者のリヒャルト・レヴィンソンは経済通としても知られ、両者は当時ジャーナリストとして高名であった。レマルクの『西部戦線異状なし』が『フォス新聞』で連載されたのはよく知られているが、それ以外にも作家でジャーナリストのクルト・トゥホルスキーや児童文学作家としても日本でよく読まれているエーリヒ・ケストナーらも寄稿している。『フォス新聞』はヴァイマル共和国期のみならず、今日に至るまでのドイツの文化、思想、ジャーナリズムにも影響力をもつものであり、それゆえにドイツを理解するための貴重な史料となるものである。

  オンライン版では、1918年から1934年までの約10,500号、合計約127,000のフルテキストページが収録されているとのことである。黴臭くもろくなった原紙をめくったり、目が回りそうになりながらマイクロフィルムを読み進めたりするのも楽しくはあるが、やはり日本にいながらピンポイントで探したい記事が見つかるのはありがたい。オンライン版の普及により、近現代ドイツの歴史や文学、ジャーナリズムの研究が進展することを期待している。